肛門疾患は,ありふれた病気であり,現実に排便という大事な働きをする部位の具合が悪くて悩んでいる患者は少なくない.
 ところが,ともすれば,その治療は軽視されがちであり,大学などでも十分な教育がなされてきていないというのが実情であった.
 実際に,肛門疾患に慣れていないものがその診療を行おうとすると,肛門管は複雑な生埋機能を備えた部位であり,その診療に際しては十分な知識と配慮が必要とされ,また誤った治療は後障害を生じ,ときには患者を治療前より苦しめかねないため,その難しさに躊躇し戸惑うことは少なくないと思われる.
 そのため,肛門疾患診療に際しては十分なトレーニングが必要となるわけで,日本大腸肛門病学会の中においても専門医制度が誕生し,その修練施設も増えつつある.
 しかし,肛門疾患を主とする学会は日本大腸肛門病学会が唯一であるにもかかわらず,2000年6月の時点で専門医1,376名の内訳をみると,大腸外科系(IIa)947名,内科系(l)206名を数えるのに比し,肛門を専門とする専門医(IIb)は223名に遇ぎないのが実情であって,今だ内容的に充実してきているとは言い得ない.
 本書は,肛門疾患を専門にする人だげでなく,普段,肛門疾患に馴染みのない一般臨床医を対象として,肛門疾患診療の実際を述べてもらい臨床的に役立てる内容とするように,筆者は第一線で実際に活躍しておられる方々にお願いした.
 内容としては,肛門疾患診療の現況と展望を概説後,肛門管の解剖生埋から始まって肛門診療の実際を,また本書の中心である肛門疾患の治療は痔核,痔瘻,裂肛,その他の肛門疾患と,最近のトピックである直腸肛門機能障害に分けて十分に述べてもらい,最後は肛門疾患の術前・術後管理について触れていただいた.
 肛門疾患に開した類書は見られるが,本書のように各執筆者が実際に第一線で活躍されており,その内容が自らの豊富な経験で裏づけされたもので,単なる知識の羅列,他論文からの引用となっているものは稀であって,明日からの日常臨床に役立てるという企画どおりのものが出来上がったのではないかと白負している.本書が臨床に携わる方々の一助となれば幸いである.2000年6月岩垂純一 (本書序から)

実地医家のための肛門疾患診療プラクティス
岩垂純一 編著
永井書店